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忘却の調べ ~オブリビオン~(第26回横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作品) [水曜ミステリー9]

「残酷な現実を知ることによって、人は成長もするんだよ」


テレビ東京/2007年5月30日放送
【脚本】大原豊/【原作】大石直紀


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ポロン

とても素晴らしい作品でした。チコスデバンバの演奏も素晴らしい!悲しい表情に「忘却」は一層悲しく心に沁みます。西城秀樹さんも萬田久子さんもとても素敵!二人ともファンです。
by ポロン (2007-06-07 01:23) 

柊 雅優

 「忘却の調べ~オブリビオン」は、日本、香港、アルゼンチンを舞台にしたスケール感の中にも、登場人物たちの心理を繊細に描いた見応えのあるドラマだった。二つの国、二つの時代に起きた殺人事件がつながり、ひとつの大きなミステリーとなっている。また、複線にもなっていたバンドネオンの音がとても美しく、効果的に使われていた。
 特に今回は、主演の二人、信彦役の西城秀樹と景子役の萬田久子の演技に引き込まれた。二人とも心に大きな傷を負った人物だが、音楽を通じて芽生えた二人の愛は、不倫とはいえ、純粋な大人の美しさがあった。誰にも言えない秘密と良心の呵責を抱えながら、気丈に生き、娘を守る景子。逃亡生活の緊迫感と病魔との壮絶な闘いの中に、父親の悲哀と自らの信念をにじませる信彦。大袈裟な台詞はほとんどないのだが、その分、ひとつひとつの台詞に深みがあり、表情や何気ない仕草、醸し出す雰囲気で深層心理を表現した演技は秀逸。さらに、それぞれの個性によって、演じている役の人物像をさらに魅力的に見せた資質もさすがである。
 信彦の娘・梓を演じた前田亜季も、素直な雰囲気が役にピッタリで好感が持てる。信彦の母・菊枝役の江波杏子も、彼女の人生すべてを体現したような哀感があり、その存在だけでも涙を誘われた。悪役では、香港の密輸業者ヤンの鶴田忍の粘りつくような嫌らしさがサスペンスを盛り上げた。
 一方、事件を追うベテラン刑事は、いささか演技が古くさい上、役に似合わないエリート感があるせいか、刑事らしさも正義も感じないし、主人公たちの立場でドラマを見ている目にはただのイヤなヤツとしか映らず、これは失敗。また、良介と雑誌記者の渋井については、本人たちの好演に対して失礼ではあるが、ストーリーでの役割を考えれば、もう少しネームヴァリューのある俳優を使うべきだったようにも思った。
 ラストシーンは、原作の小説とドラマではまったく違い、比べた場合には賛否両論が起きるところだろうが、映像化ということでは、このように変える必要があったのかもしれない、というのはわかる。ただ、それまでのドラマの重厚さから見れば、ややラストが軽い印象を受けてしまったのは残念である。個人的な意見で言えば、時効10分前などという演出は邪魔。見事などんでん返しがあるのだから、事件の真相をもう少し時間をかけて丁寧に描き、心理描写として盛り上げるべきだったように思う。
 とはいえ、やはり信彦と景子、梓との再会シーンとしての感動は大きかった。ここでも、それぞれの演技が素晴らしく、15年の想いが溢れだしたような景子の涙、それを受け止める信彦の包容力が心にしみる。最後に梓が信彦に「お父さん!」と呼びかけるシーンも、ベタと言えば言えるのだが、それでも安っぽくない感動があるのは、それまでのストーリーが重厚で、梓の心理がきちんと伝わっているからなのだろう。その言葉を受けながら、自ら逮捕された信彦、彼を追いかけた景子の姿には、一点の曇りもないどころか、一種の誇りさえ感じられて、見事だった。
ドラマそのものの深さによるものなのだろう。
 号泣というよりは、見ているといつのまにか涙が溢れてくる… そんな感動のあるドラマだった。見終わったあとの余韻が非常に深い。梓のこれからの幸せと、信彦に1日でもいいから穏やかな日が訪れることを、自然に願っていた。
by 柊 雅優 (2007-06-13 20:37) 

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